税金の仕組み住民税を知ろう

皆さんは住民税を意識されたことは有りますか?

消費税と違い、所得税や住民税は、ほとんどの方が給与から天引きされている為、あまり気にされている方は少ないかと思います。今回は看護師の皆さん、特に応援ナースを経験された看護師の皆さんからよく質問される「住民税」について解説して行きたいと思います。

住民税とは…

住民税とは個人の1年間の所得に対してかけられる税金のことを言います。

「だったら所得税と一緒じゃないの!?」と思った方もいるかもしれませんが、実は全くの別物なんです。所得税も住民税も所得に応じてその額が変わる所など似た要素を持っていますが、そもそも税金を納める先が違うんです。

所得税は国に納める「国税」で、住民税は地方に納める「地方税」となります。
その為、異なる計算方式で別々に徴収されます。

徴収された地方税は、都道府県や市区町村が行っている行政サービスの費用に当てられます。

所得税の納税先は国、住民税の納付先は地方になります。都道府県や市区町村が行っている
行政サービスの費用に充てられる

もう一つの違いは納税の時期が違います。
所得税と違い、住民税は前年の所得をもとにした住民税決定通知書が6月ごろに交付されます。

病院やクリニックなど医療機関に勤務されている方は「特別徴収」と言って給与から分割で天引きされてますが、それ以外の方は「普通徴収」と言って6月から一括もしくは年4回に分けて納付を行うことになっています。

そして、納税はその年の1月1日に住んでいる都道府県や市区町村に対して行います。
つまり、前年の所得に対して1月1日の住所地で課税されることになります。

●特別徴収(給与から控除令和3年6月から令和4年5月)●普通徴収
(金融機関で4回納付)

ここで、注目ポイント

新卒の方は1年目は住民税がかからない!?
前年の所得に応じて納税額が決まる為、新卒の方は1年目は住民税がかからず2年目から課税されます。
退職をした場合には翌年に納めなければならない!?
仕事をやめても、前の年の住民税を納めなればいけない場合があります。
その為、すでに退職していて所得がないにも関わらず、前年の所得に対する住民税を支払わなければならなくなる為手持ちのお金がなく慌てる方もいます。
ですので、会社を退職したときには、住民税を納付することを忘れずに手元にある程度蓄えて置くと安心ですね。

住民税の計算方法

次に気になるのは住民税の計算方法ですが、住民税を正確に計算するのは非常に手間がかかります。

その為ここではざっくりと目安を出す方法をお伝えしたいと思います。

個人住民税の納税額ですが所得割と均等割の合計となります。
とはいっても、中々ピンときませんよね。

それではもう少し詳しく解説していきましょう。
まず、先ほども記載した通り個人住民税の計算方法は以下のような形になります。

  1. 住民税
  2. 所得割
  3. 税額控除
  4. 均等割
  • ※所得割(課税対象額×税率)⇒所得額に応じて課税される部分
  • ※均等割⇒定められた額を一律に課税される部分
  • ※税額控除⇒寄附金税額控除や住宅ローン控除、調整控除など

この計算式を出すために、所得割と均等割、そして税額控除を出す必要があります。
ここでは4つのステップでそれぞれの算出方法を解説しますね。

住民税STEP01

紹介課税対象額

課税対象額の計算を詳しく説明

計算式にない「課税対象額」ってなに!?って思われた方もいるかと思いますが、住民税を計算するうえで基本となる「課税対象額」を計算していきます。これを計算することによって、所得割を算出することができます。課税対象額を出すには年収から1年間の社会保険料と所得控除(税金がかからない一定の金額を差し引きます)
考える看護師画像
  1. 課税対象額
  2. 給与所得
  3. 所得控除

※所得控除=所得から差し引かれる一定の金額(社会保険料等、生命保険料控除、基礎控除、配偶者控除など)所得税と住民税では所得控除額が異なります。
これで「課税対象額計算」は終わりとなります。

住民税STEP02

所得割

課税対象額に税率を掛け合わせて算出

ステップ1で算出した課税対象額に税率を掛け合わせて算出するのが所得割となります。そしてこの税率は自治体にもよりますがほとんど変動がありません。
大半の方が「標準税率」で計算をしますが、指定された都市の方は住民税率が異なります。
但し、税率の合計税率は変わらない為、結果的には住民税は同じ金額になります。
※税率や金額は住んでいる都道府県や市区町村で異なる為、正確な住民税を計算したい場合はご自身が住まわれている自治体のHPで確認してください(住民税は納める都市の1月1日時点で住んでいる自治体と税率が適用されます)
税率表 都道府県民税率 市区町村民税率 合計
標準税率 約4% 約6% 約10%
指定都市税率 約2% 約8% 約10%

<指定都市>

札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市

それでは上記を踏まえて計算していきましょう。

所得割=課税対象額×10%

住民税STEP03

均等割り

均等割りについて詳しく説明

次に算出するのは「均等割」です。これも各自治体によって異なりますので、各自治体のホームページで確認しましょう。
例1 東京都練馬区の場合
都民税 特別区民税 合計額
1,500円 3,500円 5,000円
例2 大阪府大阪市の場合
府民税 市民税 合計額
1,800円 3,500円 5,300円
例3 福岡市博多区の場合
県民税 市民税 合計額
2,000円 3,500円 5,500円
住民税STEP04

税額控除

税額控除について詳しく説明

最期に、所得割から引かれる税額控除の解説です。
税額控除には住宅ローン控除や寄付控除などがありますが、ここでは住民税を納めるすべての方が対象となる「調整控除」について解説致します。調整控除には課税対象額が200万円超えている場合と200万円以下の場合で計算方法が異なります。
合計課税所得金額 控除額
200万円以上の場合 人的控除額の差の合計額-(住民税の合計課税所得金額-200万円)の5%、但し、この金額が2,500円未満の場合には2,500円
200万円以下の場合 「人的控除額の差の合計額」と「住民税の合計課税所得金額」の
いずれかのうち、少ない額の5%
また、新しい言葉が出てきましたね…あと少しです!解説します。
人的控除額の差の合計とは、基礎控除や配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除といった、自分や家族等の「人」に関わる控除は住民税と所得税で控除額が異なります。
人的控除額の差の合計額とは、それらすべての控除額の差額を合計した額を指します。この「人的控除額の差の合計」も各自治体のホームページで確認できますので、確認してみましょう。

またまた、注目ポイント

「ふるさと納税」で控除が受けられます。
控除額は寄付金のの額から2,000円引いた額となります。
ふるさと納税は5自治体まではワンストップ特例で確定申告の必要がなくなります。またこの特例を利用すると所得税からの控除はされず、所得税分の控除額も含めて、翌年度の住民税から控除されます。節税対策の一環として実施してみるのもいいかもしれませんね。
※注意:寄付金には上限があります。また、所得や扶養家族の人数などにより額が異なるため注意が必要です。
ふるさと納税のサイト内でシュミレーションができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
本内容をご覧いただき、少しでもご理解頂けましたら幸いです。
住民税を見越したうえで、転職活動を有利に進めて下さいね。

最後になりますが、住民税は住んでいる自治体により税率や均等割りの金額が異なります。
正確に計算されたい方は必ず該当する自治体のホームページで確認してください。